空と器
木立 悟
低い空の音のなかで
部屋は明るくふるえている
明るさはやがて点になり
糸にほどけて消えてゆく
音はずっと鳴りつづけている
空はさらに低くなる
底の歪んだ容れものが
ゆうるりとまぶしく動いている
雲は重なり 覆いながら
はじまりの色を残している
音は容れものの底に積もり
まぶしさと動きは増してゆく
静かな風が横たわる
丘の上に白く五つ
強ばる枝に守られている
風の脚は 午後と同じ息をしている
まっすぐに伸び
重なることなく五つふるえる
空はさらに低くなり
芽はひとくち青をついばむ
容れものはさらにまぶしくなり
音は音を浴びてはあふれる
遠い歪み さらに遠い歪みに応えて
音は波の輪を描きつづける