さかさバケツ
たもつ

むかし空には大きなバケツがあって
悲しいことがあると人は
そこまで悲しみを捨てに行った
ある日両手いっぱいに悲しみを抱えた大男が
そのバケツをひっくり返して
中身は空の隅々まで散らばってしまった
夜空を見て
星、と子供が呼ぶものの多くは
その時のものだ
余談として
冬から春へ季節が変わるほんの数日
の更に僅かな時間
西の空に輝くいくつかの星をつなげると
さかさになったバケツの形になる


自由詩 さかさバケツ Copyright たもつ 2007-04-10 12:45:36
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