鼻血、倒れた椅子、短い悲鳴
チグトセ

不遇、
と揶揄されようがそんなこと
とくに問題じゃないんだ
とにかく馬鹿な話が多すぎる
不条理なことが多すぎる
現実は
なんだってんだ
順列をもっとよく把握してくれ
もっと本気でやってくれ
それとももう
誰も
興味なんてない
なんて言うのか……

ああ人びとは
建設的な足跡だけを残し
人生という道を歩いていく
したたかに歩き
たとえその人の身に
800万人が泣いた感動作よりも
もっとすごいドラマが起こったとしても
見過ごされ
レジの手前の箱に溜まった
レシートのような扱いをされ
ドラマはすでに質じゃない
ただ静寂よりはマシなノイズ
ないよりは、と言って流されているリピート
皆普通で
当然のことなんだ
この世は普通なんだから皆普通に決まっていて
殉教者は現代じゃホームレスと呼ばれる


今更、なんだ

何もかもすべてのものが


アリストテレスの5倍くらいすごい哲学を考えついた人は
「帰れ」と一言あしらわれ
3万回目くらいのアリストテレス特集を再放送したテレビ番組は
それなりの視聴率をマーク
それで済んでいる
何故か?
何故なら、
それで済むからだ
新種のダイエット方法論は
まだそれなりに注目されるのに
アリストテレスの5倍くらいすごい哲学は
見向きもされない
それでもまだ
求めているものと
得て満足しているものとの
その歪な違和感に気付かないというのか?

だからこの世は
腐ってる
歪んでる
価値がない
こんな馬鹿げた場所で生きていく
意味などない


と彼が
ため息をつきながら言うので
僕は
その顔面を思っきしぶん殴ってやった


自由詩 鼻血、倒れた椅子、短い悲鳴 Copyright チグトセ 2007-04-10 12:19:44
notebook Home 戻る