しわ
わら

何人目かのオンナが踊っていた


純粋だった景色も
捨てられた新聞紙のように
風に吹かれ、転げてゆく夜の雑踏

街は痛みも
嘲笑で、もて遊ぶ


ナマあたたかい酒を知り、

生きていくうちに
無防備にあけひらいた心が、
それ以上、キズつかないようにと

無頓着な騒々しさの中に
こころを、堕していった


無神経な者ほど、つよいものはなく、

下卑た笑いほど、こころをごまかせるものはなかった



ほんとうは、みんな、

純粋だったのに。




カウンターごしに、
だれかが、なにかをつぶやく

「なに言うてんの?

 そんなん、笑って済ましとけば ええんやよ 」


そんなふうに、
ヤニで黄ばんだ歯をのぞかせながら、
厚化粧のママさんは、笑いとばした


その、しわくちゃの顔は、

酒のせいか、
ネオンのせいか、

しょっぱくなるほど、
気丈にも見えてうつった



ぬけきらぬ煙のただよう、
この小さな空気の中に流れついた者たちは、

騒ぎながらも、
だれもが、
うつむいているようにも思えた


まあ、
酔いが覚めれば、
忘れることなのだろうけれど


いま、
目にうつるものこそが、
これ以上なく、リアルに思えた




しみるってのは、

こういう味なんだな



























自由詩 しわ Copyright わら 2007-04-09 15:57:03
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