しわ
わら
何人目かのオンナが踊っていた
純粋だった景色も
捨てられた新聞紙のように
風に吹かれ、転げてゆく夜の雑踏
街は痛みも
嘲笑で、もて遊ぶ
ナマあたたかい酒を知り、
生きていくうちに
無防備にあけひらいた心が、
それ以上、キズつかないようにと
無頓着な騒々しさの中に
こころを、堕していった
無神経な者ほど、つよいものはなく、
下卑た笑いほど、こころをごまかせるものはなかった
ほんとうは、みんな、
純粋だったのに。
カウンターごしに、
だれかが、なにかをつぶやく
「なに言うてんの?
そんなん、笑って済ましとけば ええんやよ 」
そんなふうに、
ヤニで黄ばんだ歯をのぞかせながら、
厚化粧のママさんは、笑いとばした
その、しわくちゃの顔は、
酒のせいか、
ネオンのせいか、
しょっぱくなるほど、
気丈にも見えてうつった
ぬけきらぬ煙のただよう、
この小さな空気の中に流れついた者たちは、
騒ぎながらも、
だれもが、
うつむいているようにも思えた
まあ、
酔いが覚めれば、
忘れることなのだろうけれど
いま、
目にうつるものこそが、
これ以上なく、リアルに思えた
しみるってのは、
こういう味なんだな