ブーツの中の夜
結城 森士
ブーツの中の夜がゆっくりと足音をたて、落ちた
爪先の薬指があるべき方向を差し示し、
質量を伴って引き寄せられる 闇の中へ
あるべき姿を見失った自身の影は、
どのようなラインを描くべきなのか分からないまま歩き続ける
電燈に照らされ、路上に写し出された影は、か細く震えている
引きずって、引きずられて
闇の中で、うずくまる
僕のブーツの中で
星はゆっくりと滑り落ち
電燈は頼りなく消滅する
ヘッドライトは掻き消え
家々の明かりが次々に消され
影が消え
過去が消えていく
母が去り、父が倒れ
皆去っていく
音もなく
黒い輪郭だけを残して
電信柱の下に佇んでいる
僕の影が、見当たらない
ブーツが、どうしても動かない