泰山木
あおば

                2007/04/08
一万年前の午後のこと
荒削りの白い木の台に
2つだけの御器を飾り
後ろ手に縛った贄の女を殺す

無駄な血は地べたに流すまいにと
殺し方を思案する怠惰な胸に
聞こえてくる扇風機の音
エアコンはまだ贅沢だの声に
耳を澄ます泰山木の白い花
辛夷 、朴の木
木蓮だのと語らって
この家に押し入って
皆殺しにしようと
機を窺っている
マグノリアの一党が
殺したり殺されたりしながら迎えた
2007年の春の宵
新入学の児童たちの
クラスメートの過半数が
左利きだの報告に
吃驚して立ち上がり
テレビジョンの
当選確定の候補者たちの
勝ち誇ったような
笑顔と声明を聞きながら
のろのろとよろよろと
どちらともとれる形容で
夕食の
御飯に水を添えて
ご先祖に供えている


自由詩 泰山木 Copyright あおば 2007-04-08 23:50:06
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