コカ・コーラ瓶ボトル
九谷夏紀
コカ・コーラの瓶ボトルを
一日一本並べていく
コカ・コーラは好きじゃない
だから中身は飲まないまま
飾っていけてちょうどいい
たまには飲む日もあって
少し飲んだもの
半分くらい飲んでもういらないって
そんなものもそのまま並べる
願をかけて空にしたボトル
やけっぱちで一気飲みしたボトル
苛立って割ってしまって半分になったボトル
全部が私だから
そのまんま
横に52本並べて
またすぐ下にも同じく52本並べていって
さらにその下にも
と
それが7列になったときには
だいたい一年経っているということ
規則的に並べることによって
浮き出される不規則性
私の感情が揺れ動くから
私の日常が定まらないから生まれる
規則どおりにいかないうつくしさ
ありきたりを
芸術として存在させる
そんなひねりは
いろんな人が持ち歩いているから
まっしろになってしまった壁も
だらだらと続く変わらない日々も
出会いさえあればいつでも飾れる
今日からは
並べたコカ・コーラの瓶ボトルを
一日一本ずつ空にしていくつもり
きれいに洗って
栓をしたままのものは飲むかもしれなくって
あるいは少しだけ飲むかもしれなくって
からっぽな瓶は少し不透明なただの瓶になって
だからこそなんか良いのかもしれなくって
発見は偶然の行動に潜んでいたりするから