霜天

ちり、ちりり、と
細く凍える氷の心音を
耳元に押し当てながら私は
グラス越しの揺れる景色を
手繰るように眺めていた春でした

くわん、と
頭の、奥の
くわんと鳴るところが私の
大きな切り替わりで
俯き加減ですが
表を向いていますから
まだ、まだ遠くを見れます
どこへ行けるでしょうか
遠くを見るというだけで
遠くを見れるというだけで

 雪柳が、遠くには雪柳が揺れていて
 揺れていて、散っていくようでした
 あの夢は、まだ空を見ていますが
 私は俯く角度で、凍えないほどの覚悟で
 海沿いの国道を北へ歩いて行くようです
 くわんと鳴る頭の奥は私の芯のようで
 まっすぐに私の中に立っていて
 今も、どこにも行かないでくれている


みんなが白いという花を私は白いとは思えない
薄く咲いては散っていく花が、私の中には無いのかもしれない
凍える氷を額に押し当てて
くわん
くわん、と
それは私の芯のように
私の中に立っていて




今も遠くを見ています
どこへ行けるの、と問われても
グラス越しの揺れる景色を
手繰るように眺めていたの、は


自由詩Copyright 霜天 2007-04-08 02:32:28
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