恋月 ぴの

メガネをはずした
わたしの素顔
おとこのひとにはじめて見せた

胸ボタンの間にネクタイを押し込め
腕まくりした。あなたは
同僚を叱咤激励して
そんな。あなたに恋焦がれていた

それでいて
何故か背中はいつも寂しそうで

生きているって虚しい事だと
わたしは思って生きてきた
これからも。ずっとそうなんだろうと
歩道橋の上から
散る桜のはかなさに想いを託し

ここから。大きく身を乗り出せば
わたしだって桜になれるかな

いつの間にか
あなたと二人きりになれた
参加を迷った歓送迎会で酔いすぎて
あなたの優しさに身を預けて
こころまで預けてみたくなった

朝になれば
あなたは。わたしの傍にはいない
それでも
メガネをはずした
わたしの素顔
乱れた髪で。そっと隠して



自由詩Copyright 恋月 ぴの 2007-04-07 23:33:21
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