お
恋月 ぴの
メガネをはずした
わたしの素顔
おとこのひとにはじめて見せた
胸ボタンの間にネクタイを押し込め
腕まくりした。あなたは
同僚を叱咤激励して
そんな。あなたに恋焦がれていた
それでいて
何故か背中はいつも寂しそうで
生きているって虚しい事だと
わたしは思って生きてきた
これからも。ずっとそうなんだろうと
歩道橋の上から
散る桜のはかなさに想いを託し
ここから。大きく身を乗り出せば
わたしだって桜になれるかな
いつの間にか
あなたと二人きりになれた
参加を迷った歓送迎会で酔いすぎて
あなたの優しさに身を預けて
こころまで預けてみたくなった
朝になれば
あなたは。わたしの傍にはいない
それでも
メガネをはずした
わたしの素顔
乱れた髪で。そっと隠して