君の名はジョイ
川口 掌
ジョイはちょっぴりおませで すこ〜し我儘な子猫ちゃん
大好きな小太郎さんに抱き上げられ
優しく全身を撫ぜてもらうのが日課です
ある朝いつものように抱っこしてもらえると思っていたのに
小太郎さんはその日具合が悪くジョイを抱き上げる事が出来ませんでした
理由など判る由も無いジョイは気が気ではありません
外に出掛けキラキラと光り輝くガラスのかけらを見つけ小太郎さんのベッドの上に置きました
またすぐに出掛け小太郎さんの喜びそうな物を探します
しかしジョイは猫です
彼女の気を引く物が
人間の小太郎さんの気を引く可能性は
とてもとても低いのです
結局ジョイはその日一日懸けて
ペットボトルのキャップだの舞い落ちた桜の花びらだの誰かの投げ捨てたお菓子の包み紙だの を
小太郎さんのベッドの上 枕元いっぱいに並べました
やがて帰宅した小太郎さんは自分のベッドを見てびっくりです
ジョイ! おいで!
説教しようと悪戯子猫を呼んで
喜び駆け寄って来た子猫を見て少し気が変わります
ジョイは昨晩酒の肴につまみ食いしたポテチを咥え
自分で食べるでなく 必死で小太郎さんの口許に運ぼうとしています
少し微笑んだ小太郎さんは言いました
今朝はごめんな
お前は何もしなくていいんだよ
そのままでここに居てくれるだけで俺は幸せになれるんだから
そしてジョイを抱き上げ
朝の分まで優しく
優しく撫ぜるのでした