ひっくりかえすひみつ
はらだまさる
註)まず、めちゃめちゃ長いと思うので時間がない人は、時間があるときに読んでいただけるとうれしいです、そして、長くてごめんなさい、拝
一
おれは、
いま
いきとんねん
二
ほっ
たらかし、
みて
みぬふりで
こころのすみに
こびりついた
いじと
おくびょうと
よわさと
いいわけの
かたまり
かなぐりすてて
みんなのまえで
ぶちまけな
アカン
ときが
くるねん
でも、
そんときに
ぶちまける
なんて
なかなか
できる
もんやない
ぶちまけることが
できるもんは
すでに
みんな
ぶちまけてきた
から
そやから
そのまんま
にして
いきてる
ぼくが
すんげえ
恥ずかしくって
ひとに
はなすなんて
ふかのうやと
おもてる
ことを
ぜったい
できん!
って
おもってる
ことを
「たいしたことない」
におきかえて
だれにも
かぞくにも
ともだちにも
すきなひとにも
かぞくやから
ともだちやから
すきなひと
やから
なんにも
いえんくて
たまに
ほんま
ふとしたときに
きになる
ぼくだけの
ぼくの
なかだけの
ちいさな
ひみつ
三
ぼくには
あほな
いとこと
もっとあほな
おとうとがいて
そやけど
ぼくは
もっともっとあほで
どうしょうもなく
おくびょうで
いとこにしたら
さいてーの
いとこで
おとうとにしたら
さいてーの
あにきで
ずっと
ずっと
さいてー
やった
四
しょうがくせいのとき
おなじがっこうに
かよってた
いとこが
ちょーしに
のって
からだが
ひとまわりも
おっきな
おないどしのこに
かんちょーして
けたけた
わらってた
ぼくは
すぐちかくで
それをただ
だまって
ながめてた
つぎのしゅんかん、
いとこが
とつぜん
たおされた
からだが
ひとまわりも
おおきな、
かんちょーされてた
そのこに
ぼくの
いとこが
ぼっ
こぼこ
に
されてた
その
いちぶしじゅう
ぜんぶ
だまって
みてた
こわい、とか
かわいそう、
とか
なんも
おもわへん
ぼくは
いとこが
あほやと
おもった
でも
いとこは
はなぢだしまくって
めちゃくちゃ
ないてたから
なんか
なんにもせんかった
ぼくを
ぼくは
せめた
五
はたちの
ぼくが
だいがくの
じゅぎょう
はやびきして
いえにかえると
ちょうど、
おとうとが
いえをでていく
とこやった、
「ちょっといってくるゎ」
なんか
そのときのおとうとは、
(なまえは『みつる』なんやけど)
みつるは
いつもとぜんぜん
ひょうじょうが
ちがくって
ぼくは
なんかへんな
よかんがしたけど
「どこいくねん?」
とふつうにきいたら
「ちょっとリンチされてくるゎ」
「はぁ?」
みつるは
ぼくのへんじをまたずに
チャリに
またがって
どっかへ
いった
ぼくは
そのまま
いえのなかに
はいると
オカンが
すごい
しんぱいした
かおで
「まさる、ちょっとみてきてくれへん?」
というもんやから
アイツのまいた
タネやから
てめぇで
ケツくらいふけよ、
とか
おもいつつ、
「もう、しゃーないなぁ」
と
いやいや
オカンのねがいを
きくことにした
そんときの
ぼくは
なんも
かんがえて
なかった
六
ぼくも
じぶんの
チャリに
またがって
おとうとが
きえたほうこうへ
はしった
そしたら
ひとどおりの
すくない
きんじょの
ゆうえんちの
うらがわに
くろい
がくせいふくの
むれをみつけた
とおくから
そのげんばに
めをやると
そのくろいかたまりの
まんなかに
みつるを
みつけた
みつるが
ひちはちにんの
くろいがくせいふくの
まんなかで
せいざして
「スンマセンでした」
と
あやまってるのが
わかった
みつるは
ぼくが
そうぞうしてたよりも
ひどい
やられかたやった
ぼっ
こぼこの
ぐっちゃぐちゃの
すくーる・うぉーずか
びーばっぷ・はいすくーるか
はいすくーるらくがきか
ろくでなしぶるーすか
しらんけど
たった
ひとりの
おとこにむかって
よってたかって
ボクトウで
てつの
かんばんで
バイクで
ケイボウで
めりけん・さっくるで
ちだらけの
がたがたで
みつるは
いっつも
ちょーしのりで
かっこつけで
ヤンキーで
ばかで
だけど
ちょうないじゃ
ゆうめいじんで
がっこうの
にんきもので
ともだちが
すくなくって
だれにでも
えらそうで
だれにでも
すぐケンカうって
でも
ホンマになかのいい
ともだちのことは
めっちゃ
だいじにして
それで
ぼくには
おにいちゃん、
おにいちゃんって
おにいちゃん、
めっちゃ
エぇかくの
じょうずやなって
おにいちゃんの
かくシ、
すきやでって
いちもく
おいて
くれてて
それくらい
あほで
ばかで
その
あほやけど
かわいい
ぼくのおとうとの
みつるが
ぼっこぼこの
ぐっちゃぐちゃに
されてるのを
ぼくは
ただとおくから
ただとおくから
ながめて
もし、
みつるが
しにそうになったら
とびこもう、
アイツがマジで
やばそうになったら
とびこもう、
って
おもいながら
もう、
すでにヤバイんちゃうの?
とか
しんだら
どうすんねん
とか
おもいながら
なんで
なんで
ぼくが
アイツの
ケツふかなあかんねん、
とかおもって
ちゅうちょして
ただただ
じかんが
すぎて
みつるは
どげざして
ずっと
ずっと
あやまってて
ちまみれで
きっと
こっせつもして
あたまを
ふみにじられて
ぼくは
それをみて
みつるはいま
なにかんがえとんのやろう、
とかおもって
そしたら
くろいかたまりは
「ちょーしのってんなよ、ボケ」
と
みつるに
はきかけて
ついでに
ツバもはきかけて
どっかへ
いった
ぼくは
ただ
それをながめてた
七
ぼくは
こわかったんや
いとこのときも
こんかいも
そうや
ただ
こわかった
だけなんやと
おもった
ただの
いくじなしの
おくびょうもんやった
それだけや
八
ぼくは
みつるが
やられてるのを
ぜんぶ
みとどけて
みつるが
いきてたこと、
ただ
それだけを
かくにんして
みつるを
ほったらかして
いえにかえった
オカンが
「どうやった?」と
しんぱいそうに
きいてくるので
「みつからへんかった」と
とっさに
ウソをついてた
これが
それからのじんせいで
ぼくのうみだす
すべての
ふかのうの
こんげんやと
しらずに
九
ぜんぶ
しらんかったことにしよ、
ぼくは
なんもしらんかった
ぼくがウソついてたら
だれにもわからんことや
ぜったいに
だれにも
わからんねん
って
じぶんの
よわさと
おくびょうを
かくすために
みつるに
そんけいされてたいから
オカンを
かなしませたく
なかったから
そんなこと
みつるが
きにするわけないって
おもえへんかった
オカンという
いちばん
みぢかな
じょせいが
どうしょうもない
ふのうの
おとこのらくいんを
ぼくにおすんやないか
としか
そんなちいささでしか
オカンのあいじょうを
かんがえ
られんかった
どっしょうもない
さいてーな
ほんまに
さいてーな
おとこ
十
なにか
あるたび
そのことを
はんすうして
じぼうじきと
じぎゃくを
くりかえして
おれはだめだ、
だめだ、
だめだ、と
ねんぶつのように
くりかえして
くりかえして
また
じぶんを
きずつけて
けっきょくは
ぜんじんるいに
うそをついて
みんなをだまして
くるしんでいた
十一
ほっ
たらかし、
みて
みぬふりで
こころのすみに
こびりついた
いじと
おくびょうと
よわさと
いいわけの
かたまり
かなぐりすてて
みんなのまえで
ぶちまけな
アカン
ときが
くるねん
でも、
そんときに
ぶちまけるなんて
なかなか
できるもん
や
ない
ぶちまけることが
できるもんは
すでに
みんな
ぶちまけてきた
から
そやから
そのまんま
にして
いきてる
ぼくが
すんげえ
恥ずかしくって
ひとに
はなすなんて
ふかのうやと
おもてる
ことを
ぜったい
できん!
って
おもってる
ことを
「たいしたことない、
みんなおおかれすくなから
それくらいのうそついてるって」
におきかえて
だれにも
かぞくにも
ともだちにも
すきなひとにも
かぞくやから
ともだちやから
すきなひと
やから
なんにも
いえんくて
たまに
ほんま
ふとしたときに
きになる
ぼくだけの
ぼくの
なかだけの
ちいさな
ひみつ
を
さいごは
ぜんぶ
ひっくりかえさな
ぼくは
まえへ
あるけへん
おれは、
いま
いきとんねん
・・・・そう
おもって
じゅうねんごの
あるひ、
おれは
そのときに
いちばんすきだった
かのじょと
みつるに
はなした
十二
はなのしたがきれて
いっしょうきずになった
だれがどうみても
ぶさいくな
みつると
おれは
いまも
なかのいい
きょうだいで
そのはなしを
きいてくれた
かのじょと
おれは
けっこんした
おれには
かのじょと
おとうとを
しんでも
まもらなきゃならない
せきにんが
あるんや
と
ほんまに
おもってる
これが
おれのひみつ
ひっくりかえした
ひみつ