雨三編
渡邉建志

1.

金属は湿っている
雨は歌っている
窓辺にはカーテンが
幾百万の色調とともに
輝いている
絵の中の小人が歩き出す
時計は止まっている
目を閉じている人がいる
ある夜のことを思い出している
雨色の時
雨傘の下

幾百万の色調は傘の色
回っているたくさんの傘
走り出す自転車たち
飛散する雨

窓の向こうの景色

月の光
時の止まった窓辺
目を閉じる人
カレンダーを一枚めくれば
30年後の老いた私 


 








2.


  休息は雨の音に遮られ
  散逸する夢の後


クロッシング


  吐息を思い出す、君の
  一音の叫びを
  反芻を
  反芻して
  高まっていく私


((欠片/反シャ


 青 青 青 青 青 青          青 
青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 
 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青
青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 
 
青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 
 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青
 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青
   青 青 青      青 青 青 青 青 
青 青 青 青 青      青  青  
 青     青 青    青 青 青 青 青 
青 青 青 青 青 青        青 青 青
 青    青 青    青 青 青 青 青 青
 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青
青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 
 青 青 青 青 青         青 青 青
青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 青 




 
  すべり落ちる舌
  君への渇き


ユア・ラブ・アンド・ザ・クロッシング


  揺蕩う長針と
  短針の交点


  


 









3.


雨の音。ひっきりなしに続く雨の音。手さぐりで進む迷路の
なか。目を閉じ続けていればだんだん見えてくるものだと聞
いて、心の中に位置座標をプロットしながら雨雨雨、ひっき
りなしに続く雨の音。くるくる回る。

いろいろな人の声が墓地の夜を木霊して行き交う。ここは私
の散歩道で、夜にはだれもいない。心の中に聴こえる声は私
のものだろうか、私の心を借りて呟く精霊達の声だろうか。
途切れ途切れのラジオのように、あちらこちらで聴こえては
消える。

夜の遺跡をこうやって眺めていると、時々のぼっていく小さ
な光が見えるものです。いまはただ、月の光が透明な音を回
しているだけですが、しばらく近くで座ってみていませんか
私のノートは準備完了です。パステルは持ちましたか。ええ
写生するのです。

回転しては上昇するさまざまな色の光が見えはじめてきます
分度器は持ちましたか。もう11時、遺跡公園が回り始めま
した。誰かがまた死んだのです。雨の樹にさえぎられるあい
のうたとともに。雨は熱いですか。そうですか。



未詩・独白 雨三編 Copyright 渡邉建志 2007-04-06 16:01:47
notebook Home