畑の道にうつむく人
服部 剛
毎日ともに働く人が
あれやって
これやって
と
目の前に仕事をばらまくので
わらったふりで
腰を屈めて
せっせ せっせ と
ひろってく
そのうち
堪忍袋の緒が切れて
ひろい集めた仕事を束にして
その人に思いきり
投げ返してしまった
あれやって
これやって
と
悪気もなく
人に仕事をばらまくその人を
もしも私の幼い娘と思うなら
「 かわゆいものよ 」
と思えたろうに
今日のわたしは思えなかった
その夜
疲れた顔で
家に帰ってテレビをつけると
しるくはっとをかぶってうつむく人が
モノクロの畑の道にあらわれて
「 雨ニモ負ケズ・・・ 」
と呟いた
* 宮沢賢治の詩「雨ニモ負ケズ」より引用。