カスミちゃん
大覚アキラ

夕暮れの近づく音がするので
ポッキーを食べながらベランダに出てみたら
銀色の機体に夕日を反射させながら
巨大な鯉みたいな旅客機が
山の向こうにふわふわと飛んでいくのが見えた


あの山のふもとのあたりには新興宗教の塔が建っていて
晴れた日にはコンクリート製のその塔が
このマンションのベランダからもよく見える

今日は天気がいいので
黄砂に煙った光の中に
コンクリートの塔がそびえ立っているのがぼんやりと見える

そいつを眺めながら
ポッキーのチョコレートだけを丁寧に舐め取る


ポッキーはこうやって食べた方がおいしいんだよ
っていうのは
幼稚園のときにカスミちゃんから教わった


銀色の旅客機が山の向こうに消えた頃
ようやくそのジェット音があたりに響き始めた
さっき夕暮れの近づく音だと思ったのはこれだったんだな


ねえ
カスミちゃん

きみは
いまでもポッキーを食べるときは
チョコレートだけを舐め取ってから食べているのだろうか

ぼくはたまにしか
そういう風にはしなくなってしまったけれど


自由詩 カスミちゃん Copyright 大覚アキラ 2007-04-05 17:57:01
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