社会見学から地球崩壊まで
楢山孝介
子供の頃、僕らは社会見学で宇宙船を見に行った
飛行場の長い滑走路に降りてきたそれは
船体に星空を貼り付けているわけでもなく
凶暴な触手の持ち主が船体を食い破っているようなこともなかった
船から降りてきた宇宙飛行士たちは
どれもただの優秀そうな人間で
宇宙での体験を僕ら子供にも解りやすく話してくれた
とても興味深く、笑いどころもたくさんあった
それでも僕らは帰り道に浮かない顔して歩きながら
今日一日に何が足りなかったかを話し合った
誰かが言った
「危険とか冒険とかハプニングだろう」
ませた少女が言った
「乗組員同士の恋愛話よ」
僕は言った
「何かがなかったんじゃなくて
あったのがいけないんじゃないか
空気のある飛行場で何を聞いても
宇宙の話に実感なんて湧かないよ」
一人ガキ大将だけは誰の話にも全く耳を貸さず
「怪獣だよ宇宙怪獣さえ出てくれば良かったんだよ」
と喚いていた
後に何故か宇宙飛行士になってしまったガキ大将は
怪獣を見つけたいという夢を記者会見場でも話し
場内を大いに沸かせた
そして本当に
とある惑星で知的生命体を発見してしまった
おまけにその中の一人を妻として地球に連れて帰ってきた
体長三メートルのリスに似ている彼女の姿をテレビで観ながら
かつてのませた少女は僕の隣で呟いた
「きっと、女性乗組員の誰にも相手にされなかったからだわ」
「怪獣の次は宇宙ヒーロー探しですか?」
記者の質問にかつてのガキ大将は照れながら
「それは子供に任せます」
と、妻の腹部を指差して言った
人類の代表みたいな顔をして僕の妻は心配そうに呟いた
「地球を崩壊させるような子供が生まれたらどうするのよ」
そして本当にそうなった