時雨れる少女
こしごえ

とおくみつめる

あの秒針の刻む音が
きこえるほどの しずけさで
あやしくぼんやりとした曇天に
にじむ光の粒子を
私も刻む
時のまなざしは熱かった
 始まりは、秋の縁側で
ぶらさがっている風鈴の
身じろぎはせずに連なっ
ている余熱のしわざだっ


やがて
仄暗い庭で
繁茂している清廉な呼吸に
さざなみたつ胸の奥のひろがりを欲して
風にそよぐ影のあつさよ
ついに奏する調べよ
なみうちはじめた雨音に
かなしみの骨格が透けて
うすいそこから微笑みがこぼれる
おりかさなった層から
未来製の水晶が
稲魂いなたまを放つ
無機質な内臓の深淵で
変わりようのない 視線が
ひっそりと虚空をつらぬいている

そうであっても
すがたは、かわりつづける
くうちゅうでただよっているかとおもえば
ちじょうをながれるときもある
しょうじょのなみだにきづけるでしょうか
(しずかにふるえる
 うごかぬことり
 てのひらで
 えいえんのねむりについた)

さぁーっと
しずまりゆく雨のゆきさきの
花ともる黒髪をあらう
少女はふるふると水面下から
(時とともにあるの)
波紋ものこさず
空へのぼりゆく羽音をきいた









自由詩 時雨れる少女 Copyright こしごえ 2007-04-04 14:07:38
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