各々の春
瑠音



春の日 降られたし



パステルカラーの洋服が目立つようになった最近
冬のうちから季節を無視していたあたしは
回りに溶けてしまいそになるのが怖くて
茶色と黒の服を買い込んだ


命を欠いた人形を抱いた少年少女の群れに出会ったとき
結果的に必要なものはもっとシンプルなものなのだと気が付く
自分と彼らの間に線をひいて満足か
それとももともとあった線を踏みにじって満足か


去った誰かを嘆き出会うべき誰かを嘆く
心配性な友人は毎日私の部屋のドアを叩いては
誰もいなくなればいいと言うものだから
ある日目を見て言葉を吐いた
それなら私が 一番にいなくなろうか と
次の日彼女は


僕の名前を呼ばないでくれないか
忘れようとしているのに
僕の名前を呼ばないでくれないか


冷蔵庫を開けてその中にあったビールを2本手に取った
一本を君に
酔わせて何をする気なのと聞くから
一本で酔う女には惚れないよと返す
抱きしめたいだけだ
寒い冬が終わってもなお
残る孤独はどうやら雪とは無関係だったらしい


忘れようとすればするほど
だってノスタルジック
冬を追いかけて追いかけて
たどり着いたここに
花が咲いたら貴方を忘れると決めた



春の日 降られたし



聞いて
何が起きても
誰が何を思っていても
私は ただ君を信じているの 。







未詩・独白 各々の春 Copyright 瑠音 2007-04-04 08:37:51
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