電気の無い世界で
はじめ

 地球の人々は夜6時に起きて朝6時に眠る それに背く者は刑務所に入れられる
 世界の王様が考え出した新しい掟だ
 どうしてそんな掟を作ったのかというと 王様が夜が好きなのと 生まれつき夜行性である為だ
 その掟によって地球上の市民の生活は滅茶苦茶になった
 学校も夜の8時半から始まるようになったし 通勤ラッシュもそのぐらいから始まって夜明け前に終わるようになったし 人々は太陽の光に当たることはなくなった しかしただ昼と夜が逆転しただけだったので混乱はすぐに収まった
 悪いことばかりではなかった 人々は必ずといってもいいほど 星空を見るようになったし月と向き合えるようになった 暗闇と親しくなることができたし 夜は涼しいし 犯罪も減っていった しかし電力が馬鹿にならなかった 莫大な赤字を生み出し 王様は税金を上げた 人々は王様に反発したが 反抗した者は全員刑務所に入れられ 電気椅子で処刑された 魂は嫌でも電気の恐ろしさを知らされた
 魂達は神の元へ行き 王様の暴虐ぶりを身振り手振り交えて必死に説明した すると神は怒り 世界中から電気が起こる現象を奪ってしまった 神は太陽があるのだから太陽の下で生活しろと檄を飛ばした しかし王様はそんなことにもめげず 掟を実行し続けた
 人々は漆黒の暗闇の中で生活しなければならない羽目になった 生活は原始的な生活に戻り テレビもラジオも無い生活を強いられるようになった 人々は火を炊いて歩いて生活しなければならなくなった 人々の不満は募り 神にお許しを請う毎日が続いた 次第に王様も絶望的な気持ちになっていった
 王様はとうとう神に頭を下げ 許しを請うた すると神は掟を止めれば許してやろうと言った 王様は泣きながら分かりましたと謝って掟を廃止することを発表した すると世界に電気が戻り 人々は歓喜で湧き上がった 生活も朝起きて夜眠る生活に戻って 再び太陽の光を浴びることができるようになった
 王様一人だけは夜行性のままだった しかし今国民のみんなから朝起きて夜眠る生活の素晴らしさを教えてもらって その生活リズムにすることに奮闘中である


自由詩 電気の無い世界で Copyright はじめ 2007-04-03 06:08:11
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