僕はサーカスのピエロ
はじめ
下肢の無い僕はサーカスのピエロになりたくて 物心ついた時から 毎日車椅子を動かせて街に出て大道芸人の先輩の隣で滑稽なメーキャップとお母さんが作ってくれた服装でパフォーマンスの練習をしている
車椅子の上でビーンバッグやクラブでジャグリングをやり カスケードやファウンテンやシャワーやジャグラーズ・テニスやアーチやクロウキャッチやミルズメスやエリックス・エクステンションやフラッシュやピルエットをたっぷり時間をかけて披露する
僕はジャグリングの全てをマスターした
これも下肢が無いお陰だ
僕の両手は魔法の両手と呼ばれている
けど先輩は本物のナイフを使っている
臆病で未熟な僕にはとてもできない
でも自分の性格を直す為に今 夜遅くの帰り道の公園で ナイフのジャグリングの練習をしている
先輩は もうすぐ大道芸人を辞めて ヌーヴォー・シルク系のサーカス団に入るつもりらしい
先輩は僕に お前もすぐに入れるさ 地道にやっていけば必ず俺とは違うけど、サーカス団に入って 世界中を巡業していくんだ 世界中を旅だぜ 俺もお前もサーカス団に入ることが夢だったもんな いや 違う お前にはまだ目標があった サーカスのピエロになりたいんだよな 花形のピエロになれるのは並半端な努力じゃなれないぜ しかもお前には足がない それだけでもハンデキャップがあるのにお前は人一倍努力しなければならない 車椅子のピエロ… うーんいいじゃねぇか お前がピエロになれたらまず一番にお前のショーを見に行くぜ だから 俺がいなくなっても頑張れよ
僕は先輩の言葉にいつも励まされている
僕はピエロになるのが夢 その為にはどんな努力だって惜しまないさ
今日もまた 新しいお客さんが僕のショーを待っている
輝かしい未来へ向けて僕は全身力で駆け出した