Fetes(祭)2篇
角田寿星


(1)

あかるい
闇。
あしおとが
だけが
3分の4歩 すすみ
7ブン の5 ホ もど
るるるるるるるるるるるるる
光は
くらい光を駆逐しそれはさらにあかるい光によって
ながれつく 岸べ
丘をころがりのぼる
その
あしあと。
あしあと。あしあと。
あしあと。あしおと。あしあと。
リズム に のって

拍子木の驟雨がいっせいに光をうがち森をそうだぬけなければ
一対の蛾が螺旋をえがくよう--にからまり合う鱗粉のささやき
がどうしてもかの名前を思い出せない思い出そうとさえしない
ふざけたような軽い軍靴のステップ砂漠の色だそれは森の海の
雲の色だいいえちがいます御嶽しずかな石の押しだまった集積
ひろがり集束するベクトル嬌声のひびき槌を砧をその奥で叩く。

あしあと。あしおと。あしあと。
あしあと。あしあと。
あしあと。
そうだ
森を
ぬけなければ
あかるい
闇の
なかを。


(2)

夜のまんなかで 立ち上がる兎のように
いっそ 月に狂ってしまえたなら
よかったのに

村のはずれ
丘の祠にむかうほそい道の
両脇に列をなす
篝火 ゆっくりと
四つ脚の車輪が滑るように昇っていく
ふっ と途切れそうになる あれは
みずの音だろうか それとも
ゆらゆらと炎に明滅する背中
あなたの
坂の軌道にさしかかる

 月。

(月ガ沈ミ我ラ 月ヲ忘ル
 忘ラルル月 昇リユク時
 我ラ赤児トナリテ照ラス
 初メテノ月 思イ出ヅル)
高速でまわる独楽を手のひらで受けとり
たわむ草 闇に浮かびあがる面
あかあかと燃える
切れた弦と 放物線と 失われた記憶の

 月。

月を視るのは誰もがはじめてだから
誰もがあなたの背中を 骨を 案じていた
はじめての月にいく 生野のみち
せまい昇り坂
はし がかり かがり ひ
火の粉が大地を舐めるように
這っていく くらい緞帳に
散らばり 舞 消える
(祠ヘト続キタル路ヤ 路ニ非ズヤ
 月ノアワヒニ続キタル 路ニ非ズヤ
 橋懸リナリ
 月ノ裏側ノ朱ニ染マル顔)

やがて すぐに 忘れられるだろう あなたの
あかい背中 舞 小さくなり おおきく揺らぎ
たかくかかげた 両手 何処からの 光を浴び
やみに ほむら 消える 背中 もう見えない
あなた 闇にたかく 舞台のむこう 浮かぶは

 月。




自由詩 Fetes(祭)2篇 Copyright 角田寿星 2007-04-03 00:28:10
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