ドナドナ
わら

紫煙のゆらぐ、香りの残響

異国の音色のたたずまい

赤と金をまといし霧の楼閣

ゆらりとまわるガラス化粧




ほとりに見える発光に

キミの越えた山々をおもう



雲にのまれた大地の先より
遠く、この街まで運ばれてきた



きみの生まれたと言う、その場所を
ぼくも偶然、見て来たよ


朽ちた柱と土ろうの重ね
桶にくめては、菜を洗う

豚の煮込む匂いのした



日に焼け、赤く、ほてった子たちが走り


にわとりを捕まえる、そのかたわら、
なにを見るでもない無表情な男たち


枯れた手で野を耕す






時代のせいというのだろうか

生まれた世界というのだろうか




泥にまみれ
すりきれたシャツに

黄ばんだ歯は、なにをみせる?







そう、きみは美しかった

妖精のような、その姿と

くったくのない笑顔を放ち

無邪気に、ここへ舞い降りたのかい?


そして、山を越えたのかい?






ニーハオ リ−ベンレン





あのとき、きみは、
何と言っていたんだい?

それ以外は、何もわからなかった





この街に来たのは、
美しかったからなんだ



ドレスを身にまとい
真紅のカーペットに並び立つのは、
美しかったからなんだ




その村に行ったとき、
偶然、きみに似た人を見た


いやがる様を、無理やりに、
車へと押し込められていた



別の2人の女は静かにうつむき

後ろの座席に腰掛けていた



きみに似て、
美しかったよ








小豚が野草を食うている


花も咲いていない、その寒村では


また、一輪がつまれるように







ゆれる牛車の歯車よ


世界は今日もまわっている


現実という音を
きしみ上げている





その高級車は
この街へと向かっていった

















自由詩 ドナドナ Copyright わら 2007-04-02 11:40:11
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