ドナドナ
わら
紫煙のゆらぐ、香りの残響
異国の音色のたたずまい
赤と金をまといし霧の楼閣
ゆらりとまわるガラス化粧
ほとりに見える発光に
キミの越えた山々をおもう
雲にのまれた大地の先より
遠く、この街まで運ばれてきた
きみの生まれたと言う、その場所を
ぼくも偶然、見て来たよ
朽ちた柱と土ろうの重ね
桶にくめては、菜を洗う
豚の煮込む匂いのした
日に焼け、赤く、ほてった子たちが走り
にわとりを捕まえる、そのかたわら、
なにを見るでもない無表情な男たち
枯れた手で野を耕す
時代のせいというのだろうか
生まれた世界というのだろうか
泥にまみれ
すりきれたシャツに
黄ばんだ歯は、なにをみせる?
そう、きみは美しかった
妖精のような、その姿と
くったくのない笑顔を放ち
無邪気に、ここへ舞い降りたのかい?
そして、山を越えたのかい?
ニーハオ リ−ベンレン
あのとき、きみは、
何と言っていたんだい?
それ以外は、何もわからなかった
この街に来たのは、
美しかったからなんだ
ドレスを身にまとい
真紅のカーペットに並び立つのは、
美しかったからなんだ
その村に行ったとき、
偶然、きみに似た人を見た
いやがる様を、無理やりに、
車へと押し込められていた
別の2人の女は静かにうつむき
後ろの座席に腰掛けていた
きみに似て、
美しかったよ
小豚が野草を食うている
花も咲いていない、その寒村では
また、一輪がつまれるように
ゆれる牛車の歯車よ
世界は今日もまわっている
現実という音を
きしみ上げている
その高級車は
この街へと向かっていった