傷だらけのヒーロー
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月の明かりが猛獣の目のように
この街を怪しく照らすよる
一台のバイクが唸りをあげて
幹線道路を駆け抜けていく
正義も悪も無いというなら
戦う事に意味はあるのか
考えるほどに深みにはまる
それでも新たな戦地へと向かう
傷だらけのヒーローは
一体何と戦っているのか
震える背中が語るのは
一握りの迷いと不安
東の争いを解決しても
西から聞こえる叫び声
人間が生きている限り
消えることの無い憎しみと悲しみ
正義も悪も無いというなら
一体何を信じればいいのか
襲い掛かる疑念を振り払い
アザだらけの拳を握り締める
傷だらけのヒーローは
何故戦っていられのだろうか
愛する人の笑顔と引き換えに
磨り減っていく命の灯火
力で悪を捻じ伏せる事が
正しい事だと言えるのだろうか?
自分の行いは正義だと
証明する事が出来るのだろうか?
傷だらけのヒーローは
それでも戦う事を選ぶ
命と信念を計りにかけて
信念が勝ったなら引き止めはしない
生きて帰れとは言わないさ
必ず戻ると信じているから
傷だらけのヒーローは
今日も夜の街を駆け抜ける
終わる事の無い戦いの果てに
答えを見つけられると信じて