淡水魚
夕凪ここあ

花を摘んだ
小さな
嘘をついた
魚になりたい
そんなもの

月のない夜
寝返ると
水の底で
泡してる

パパも
ママも
いない
でんぐり返る
せかい

朝もやで
目が霞む
水面が
きらきら
しすぎてる
うろこ
だって

じっと
動かないで
いると
寂しさに
押し潰される
今日は
遠くまで
行こう

だって
辺りで
尖った
こわい
目玉たち

せかいの
はしっこなんて
一日で
行ける
ここは
湖だって
知ってる
わたし
かつて
おんなのこ
だったの

淡水魚

目を
丸くして
しっぽを
折りたたんで
話を
聞いてる

水の底は
いいね

ことばは
泡になって
みる
さわる
はじけてく
ごかいなんて
きっとない

フリルのワンピース
赤色の靴
みみずくの声
はちみつ色の
朝のこと
ママの
笑い声
とか

いびつに
泡してる

摘んだ
花の色は
なんだっけ

わたし
明日には
また
おんなのこに
なるの
なんて
小さな嘘
ううん
祈り
だったのに

うろこが
いちまい
いちまい
剥がれてく

寝返ると
また
でんぐり返るのね
きっと

あったかい
ベッドで
おんなのこで
ありますように

喉の渇きが
恋しい
くらいに



自由詩 淡水魚 Copyright 夕凪ここあ 2007-04-02 03:11:00
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