眠り
なかがわひろか

ある夜ふと私は眠り方を忘れてしまった
思い出そうと頭を振り絞ってみたけれど
それほど易しいものではないようだ
私の眠り方は私しか知らない

何日もすると
私は眠り方を忘れた自分に慣れてきた
本を読んだり
映画を観たり
時には真夜中の町を散歩したりした

深夜の公園で一人遊ぶ少女に出会う
私はただそれをじっと見ている
お互い不可解な行動を取っているが
夜はそういったものをうまく隠してくれる

ねえ
どうやって眠ればいいか知ってる?
少女は答える
学校で習ったよ
でも先生もうまく眠れないみたい

少女は遊びにも飽きて
帰って行った

私は眠り方をすっかり忘れてしまったので
今更思い出す必要もないのだけど
なんとなく宝探しをしているみたいで
少しわくわくしている

そんなことを思いながら

私は今夜も眠り方を思い出せない

(「眠り」)


自由詩 眠り Copyright なかがわひろか 2007-04-02 03:07:11
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