未来と希望
シリ・カゲル

未来と希望がついにかつての方角に行ってしまった
自分たちのことを、あまりに抽象的に語る若者たちに辟易したのだという

「僕たちはもっと実体を持った形而下的存在だ」と未来が苦虫を噛み潰したような表情で現在を振り返る「それなのに、この頃は僕のことを信じる信じると言いながら、どういう将来の自分に出会いたいのか、まったく掴めていない子が多すぎるよ」
「僕たちは元来、信じるに危険を伴う存在だったはずだ」と語る希望の顔からは絶望の色が隠しきれない「それなのに、この頃は盲目的に僕たちの名前だけを追いかけて、自分のなすべきことをまったくしない、危機管理能力の欠如した子が増えてるんだよ」

未来と希望は、総合的に判断して、自分たちの存在がかえって「みらい」と「きぼう」を見えにくくしているのだと結論づけた
その結果が、今回の逃避行である

「キミたちには、自分の心が求める、オリジナルな生を満喫していただきたいと思います」そうコメントを残すと、未来と希望は、アロハシャツとビーチサンダルという格好で、サンオイルの匂いをプンプンと漂わせながら、かつての方角行きの直行便に乗り込んでいった。


自由詩 未来と希望 Copyright シリ・カゲル 2007-04-01 23:46:17
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