バス停から玄関まで
七味とうがらし
取引先と切れた
親友が転勤で遠くに行った
母が再入院した
そして今、
花見をした帰り
前を歩くわが妻
うまくいけば
子ができて
うまくいけば
その子は老いた妻を
今の私と母のようになんて
今、
ふいに雨が立ち
クリークに桜をせせらぎ
黙々と
くすぶった月がにおい立つなか
君は
タイヤのしぶき去る音に
「タクシーに乗ればよかったね」と
わらっている
とにかく今、
バス停から玄関まで
道の端の白線の上だけを歩く
今はとにかく
白線の上を歩く
白線を
うまくいくように
うまくいきますように