お姫様と王子
はじめ

 昔或る国が或る国を占領した 国民全てが捕らえられ 牢屋へ入れられた
 占領した側のお姫様は牢屋を見回っている時に 占領された側の王子を見た
 それは一瞬のことだった しかし永遠のものとなった お姫様は王子に恋に堕ちたのだった それは見つめられた王子も同じだった 王子もお姫様に恋に堕ちたのだった
 しかしそれは到底叶わぬ恋であった 身分は同じでも相手は捕らえ側と捕らわれ側 どっちにどう転んでもこの状況を打破する確率はゼロにすぎなかった
 しかしお姫様と王子を突き動かす衝動は限りなく等しいものだった ある夜 王子は兵士の目を盗んで牢屋へ入り 王子に会おうとした するとお姫様の気配を誰よりも先に感じて王子は鉄格子の前に立っていた
 お姫様は鍵を外し 涙を浮かべて王子の手を握った 一目逢った時から貴方を愛していましたと言った すると王子も私も貴女と目が合った瞬間から愛してましたと言った
 お姫様は王子に出ましょうと言った すると王子はでも民達が牢に… と途惑った しかし兵士が中の異変に気が付き入ってこようとするとお姫様は さぁ 早く と急かして王子の手を引いて城から抜け出した
 二人は白馬を走らせて遠い森に着いた 森の中を歩いていると 月の光に水面が照らされて輝いていた湖に着いた お姫様と王子は馬から降りて時間の感覚が麻痺するぐらい長く抱き合った 森の精霊達は決して結ばれることのない二人を見て深く嘆き悲しんだ 森全体が二人を哀れんでいるようだった やっと二人は顔を上げるとたとえ途中で捕まっても 何処までも一緒に逃げていくことを決心した その決心が月までも泣かせた 二人は白馬を捨て森を抜け 何処までも何処までも走っていった
 しかし二人の愛の逃避行は長く続かなかった 国境のすぐ近くで二人は捕らえられ永遠の別れとなってしまったのだ 王子は逃亡の罪で一番最初に処刑された お姫様は嘆き悲しんだ
 お姫様は生涯をかけて王子を想い続けた その想いは両国の争いまでも止め 平和になった お姫様は平和のシンボルとして死ぬまで尊重された
 現在 お姫様と王子のお墓は一緒に埋葬され 天国でやっと結ばれて 永遠に 幸せに暮らしている


自由詩 お姫様と王子 Copyright はじめ 2007-04-01 05:54:39
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