焼きそばパン。
もののあはれ

コンビニの入口脇で。
ホームレス風情のおじさんが。
焼きそばパンを貪り食う姿を見た。

よく分からないけれど。

こんな光景を見るといつも。
僕は胸を締めつけられてしまい悲しくなる。
でもおじさんは強力に腹が減っていて。
ブルーシートの青い家に帰るまで我慢出来なかったから。
ここで食べているだけかもしれない。
だけれどどうしようもなく悲しい。

よく分からないけれど。

僕が一億円持っていたら一千万円あげたい。
でも僕は今一万円持っているけど千円をあげれない。
だから僕は一億円持っていても一千万円あげれないだろう。

そんな人間だ。

優しさなんて分からない。
愛しさなんて分からない。
正しさなんて分からない。
悲しさなんて分からない。
だけれどどうしようもなく悲しい。

よく分からないけど。

僕も焼きそばパンを買って家に帰ろう。
家に帰って焼きそばパンを貪り食おう。
この胸苦しさをどうか。
焼きそばパンを喉に詰まらせた苦しさで。

相殺しよう。
そうしよう。

よく分からないけど。

多摩川沿いのブルーシートの青い家々の脇にある桜が。
この世のものとは思えないほど美しく咲き乱れていたらいいのにと。

百年経って千年経って。
僕らの身体の養分があの桜の花びらに変わればいいのにと。

この焼きそばパンがおじさんの焼きそばパンよりも。
むちゃくちゃ不味かったらいいのにと。



自由詩 焼きそばパン。 Copyright もののあはれ 2007-03-31 10:57:35
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