春
なかがわひろか
それは奇跡の季節
花や草が一斉に芽吹く
あちらこちらで聞こえる音は
寝起きの悪い生き物の声
毎年やってくるただの循環の季節なのに
何かが始まりそうな気がするよ
君を見つめる僕の瞳も
生まれ変わったようだ
春が来て
春が来て
それは冬と夏のほんの隙間だけど
春は来る
春は来る
またきっとぼんやりしてるうちに
去ってしまうのだろうけど
桜はいつの間にか満開で
そして雪の幻影を思い出させるように
風に流されるままに
散り落ちて行くんだろう
春は過ぎ
春は過ぎ
始まりは終わりを迎える
春を待つ
春を待つ
またきっとぼんやりしてるうちに
やって来る
(「春」)