えがき さけび
木立 悟
水に還り 消えてゆく
弧に描かれた羽があり
軌跡のようなはばたきが
空にも地にも重なってゆく
三つの腕を昇る霧
つぼみの上のしずくのつぼみ
音をあおぐ 青をあおぐ
微笑みを聴く
離れた冬に咲くひとり
声から声に灯る声
手のひらのかたちの湿り気が
曇を静かに持ち上げてゆく
影のなかで
影と水はじっとしている
自身よりも濃いものを見つめながら
互いの指を確かめあう
青と蒼と碧は語り尽くせず
飛沫のなかを廻りつづける
はじかれてはいない どの色も
はじかれてはいない どの空にも
絵を描くように命じたものが
絵を焼くように命じたあとも
絵を描くものは描きつづけて
いろどりは叫びつづけている