地下鉄
夕凪ここあ

地下鉄を抜けて
まだ低いところで呼吸してる
午後一時過ぎ駅前広場
灰色の街で
塗りつぶされてく
人も教会も犬も風も光も私だって一緒よ
乗りついできた
ひとつめの駅の
名前は何て言ったっけな
揺れながら見る真昼の夢
ふたつめの駅で
晩ご飯のことや
読みかけの本に挟まれた
くたびれた栞の色を考えながら
あと
君のなみだの透明度を
みっつめの駅に
置いてきちゃった
外はもやがかかったみたい
よっつめの駅を通り過ぎるころ
モスグリーンがいいよ、
やっぱり絵の具は。
街角のカフェの壁に
夜中らくがきしに行ったら
いつつめ むっつめの駅からずっと
名前が欠落したままで
無口な車内アナウンス
車輪の音楽
窓ガラスのためいき
何だって連結してない
不安を握りしめたら
折れ曲がった切符で
左手薬指の絆創膏がもう
剥がれ落ちそうなので
このまま思いつきで
画材屋さんまで
行こうか
絵の具一色だけ買いに


自由詩 地下鉄 Copyright 夕凪ここあ 2007-03-30 19:53:19
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