さだめ
松本 卓也

もし明日のある時唐突に
心臓が停止したとして
その瞬間を笑って過ごせるかな

帰り道で見た交通事故
ニュースで見た訃報
新聞を賑わす殺人事件

生まれた瞬間に
どんな風に死ぬかが
もう決まっているとしよう

足掻いた末に縋りつく生き方も
諦めて閉ざした未来さえも
気にしないふりをして笑う今も

初春に舞う蝶の羽音
早起きした蝉の鳴き声
澄んだ川を濁すコンクリート

目に見えたもの全てが
例えば明日を境に
見えなくなるとして

どうして生きているのかなんて
問いの回数を重ねるごとに
見失っていくだけなのに

求められる事もあれば
捨てられる事もあった

愛した夜だってあったし
切り捨てた関係もあった

最初から決まっていた事だと
振り返る日が来るかもしれない

泣きたいと願った風景
笑いたいと思った瞬間
慰める声に答える一時
振り返る度に嘯く

つまりはそんな感じなんだよ

だけど見据えた先に輝く
星のつぶてが何であるかなんて
明後日になっても分らないのだから

一粒二粒の雫を降らす空を通して
思い知らされる瞬間に悔やまぬよう
開け放った心が偽らぬよう

今日の笑顔を明日に繋げて
そのままいつか終われるように



自由詩 さだめ Copyright 松本 卓也 2007-03-30 00:12:23
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