捨てられない症候群
黒子 恭

一人の部屋で
彼等はがやがやとしてしまっている。
思い出も一緒くたにしてしまうから
部屋がごみごみしてしまっている。
 
とうの昔に成ってしまったんだな、と少年野球用のグラブが寂しさを醸し出してしまっている。
飽きたら私も彼処に往くのね、と
なんとなく壁に飾った
セブンスターの空箱を見て
キャメルメンソールが
寂しさを唄い出してしまっている。
 
一人の部屋で
彼等は部屋の隅に潜む暗がりと闘ってしまっている。
思い出が私の手を止めているから
部屋がごみごみと
してしまっている。
彼等を生殺しに
してしまっている。
 
申し訳ない。
と思いながらも
私は思い出を捨てられなくなってしまっている。


自由詩 捨てられない症候群 Copyright 黒子 恭 2007-03-29 18:19:57
notebook Home