ゴミ〉岩谷宏へのオマージュ
カスラ
ガラスの円い橋が架かる
渡らずに50年かかって ゆっくりと溺死して行くとき選別がなされる
炎の花弁が育った
地球に突き刺さる杭であることが出来なかった人たちが次々に焼却炉へと運ばれている
ホモサピエンス 愛着の持てない失敗作 炎はとっくに吐き気を我慢している
残された肉体という牢獄に閉じ込められ撃ち込まれたものには ただ見すえることだけの使命がかせられている
旧いタイヤが捨ててある まだ使えるテレビが捨ててある ゴミ捨て場はここちよい湿度に温度 オマエはその片隅に生えたキノコだもの 室温に 日の光りのなかに 溶ける
そこから見上げる高いビルの谷間の影の上空に 二対の天使の羽だけが並んで飛んでいる そんな間抜けなところが好きで
背の高いグラスにソーダ水を入れて届けてやろうか
自分にかかる ありとあらゆる痛みは 若いうちに全て経験しておかなければいけない 人間を条件づけたつもりでいい気な造物主をコケにするために
生まれ 育ち それら偶然でしかないものに目をむけた途端 余計なお節介どもがしゃしゃり出て オマエの顔もますます醜くなる
貪欲で卑猥な人形遊びをしている老人たちの オマエは人形になったり 玩具になってやったり 時の薄明かりに見えるものは そんな迫力の はの字もない地獄画ばかり
人形の中に ピノキオの中に 本当の自分がいることも知らずにそのまま炎に運ばれ焼かれてしまう 糸を切り 立ち上がることもなしに
孤独で清潔な牢獄を その不安のハンマーで叩き壊すものは オマエ自身の巨大な欲望にしかない
巨大な欲望にとって 今日何を着 明日何を食べるかなど問題ではない
巨大な欲望にとって 昨日何を得たかではなく 何を捨ててきたかが問われ
巨大な欲望こそが 自分の一本しかない背骨を犬にくれてやる
ワタシはゴミだから 降るどの雨にも洗われる用意がある