1980年12月9日生まれの彼女
リヅ
1980年12月9日生まれの彼女は
もう一日早く生まれてればジョン・レノンの命日と同じ日だったのにって言う
スカートの裾を春風にはためかせながら
本当はべつに人は死んだら生まれ変わるとか
そんなの信じてない
ほら また風が吹いた
彼女の長い黒髪が軽やかになびく
いつも曖昧に笑って頷くだけだから
僕はたくさんの質問をおくるんだ
いて座のO型
東京生まれの東京育ち
162センチ
体重は絶対教えてくれない
キスをするのが好きで
イマジンの最初の部分しか歌えない
もう一日早く生まれてればジョン・レノンの命日と同じ日だったのにって言う
これは口癖
あてどない散歩はいつまでも続くような気がするけど
僕らには帰る部屋がある
涙腺はちゃんと正常に乾いてるから
僕らに話し合うべきことはない
雨の日の窓辺も月の出ない夜も
ここからはずっと遠くて
春の日の光が
彼女の薄い耳を透かして
小さな金色のピアスを輝かせるのが
彼女の細い足首を白く縁取るのが
美しくて大好き
だけどそれを口にすると
彼女はもう何度も聞いたよって曖昧に笑う
僕らには話し合うべきことがない
一つ一つの質問が彼女を裸にしていく
あといくつ残ってるんだろう
僕らは上手くいってるって言えるかな
Imagine
想像してごらん
彼女がもう一日早く生まれてれば
もっといろんな歌を歌えたかもしれないけど
きっとそれだけ
曖昧に笑うだけ
僕の想像力はここまで
服を全部脱いだらすることはただ一つ
事が終わった後
天井の染みを目でなぞりながら
裸のまんまじゃ散歩できないねって
ようやく言葉を紡いだら
彼女はまた曖昧に笑った
僕らに話し合うことなどなかった
もうキスしかできない