壊れた扉から
はじめ
液体状の光が漏れていて僕の靴につくとキラキラと輝いていた
どうやら外の世界に触れると液状になるらしい
床に広がった光はゼリーのようにプルンとしていた
僕は光の先へと進んでいった
そこには色取り取りの花が咲き 蝶々達がその周りを飛び回り花の蜜を吸い 美味しそうな草が一面一杯に生えていて 牛や馬や羊達が首を垂れて無我夢中に頬張っている
そんな光景が際限なく続いていて ここは天国じゃないかと思う
僕はなだらかな丘を下っていって 煌めく海が遙か彼方まで広がっているのを見た
雲が海に引っ付いて 空が低い じっと立って耳を澄ませてみると 大地の声が聞こえてくる
僕は目を閉じて 大地と一体になったような気分になる 強い風が吹いてきて 体が清められていくような感じになる
…汝は何を求めるのか…
世界の神が風の力を借りて僕の耳にそっと語りかける
僕はそっと神に答える
愛した人に逢わせて下さい…お願いします…
神は少し間をおいてゆっくりと答える
よかろう 汝の願いを叶えてやろう…瞳を開けるがよい…後ろを振り返れば 汝の愛した人が立っているだろう さぁ 瞳を開けるがよい…
僕は目を開けて ゆっくりと振り返った すると僕の愛した女性が立っていてにっこりと笑っていた
…久しぶりだね ずっと私のことを想ってくれていたんだね… そのお陰であなたに逢うことができたのよ… 心からありがとうといいたいわ…
僕は大粒の涙を流して君の元に駈けていき抱き締めた そして見つめ合ってキスをした 鷲達が僕達の上空を飛び回り 再会を祝福してくれた 世界の神はにっこりと微笑んで僕達のいる宇宙からゆっくりと身を引いていった