バス通り
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バスに乗り込んで
マーマレードをパンにたっぷり塗り
ラジオの側から離れずに
ストロベリーシェーキにアイロンをかけて
トマトジュースをエッフェル塔にぶちまけたら
アマリリス!時計の長い針を折ってしまえ!と叫ぶ声がしたので
革命を起こすのは今だとばかりに
ルイーノのお抱えのブラスバンドが調子っぱずれのマーチを演奏し
町中の犬たちを追いかけまわした
そのとき空に浮かんだ白い雲の中からひょっこり顔を出したのは
三年前に家を出て行方の分からなくなっていた黒人のミカエルだった
彼は悲しそうに怒り
両手をばたばたとさせて鳥の鳴き真似をしてみせたから
内ポケットに入れてあった万年筆の先からインクが洩れ
青いシャツに大きなしみができた
それはロールシャッハテストの絵柄みたいに左右対称の形をしていた


まるでプールサイドで食べたニコチン入りのハンバーガーみたいに
あっけなく革命は鎮圧され
残されたものといえば
何が書いてあるのか分からないくしゃくしゃになった紙きれと
干からびたソーセージと
夕食に食べるつもりの魚二匹と
冷蔵庫で冷やしてあった野いちごとさくらんぼと
ミニーマウスのぬいぐるみと
ペチコートと
フランスギャルのレコードと
トナカイのレリーフと
北極から運ばれてきたブラックボックスと
数枚の写真だけだったから
2の付く日には飛行機に乗ってはいけない
アルマジロが低い姿勢で
君のトランクの中から飛び出そうとするから


ブルースの流れる午後四時頃には
楽しい昼寝の時間は終わって
みんなはナイフとフォークを塩水で洗って
岬で横一列になって
グレゴリオ聖歌を歌いながら
素晴らしい夜明けを待つに決まってる
かびくさい地下室の壁に描かれた
隣り町に住む
赤い髪をしたおませなヴェロニカのことを考えながら


“それは新しくはなく
日々の努力によって培われた
メビウスの輪のように
バス停でのすべての待ち時間によって
解放を約束する部屋
怖がるのは女性たちだけではない
愛情をとりあえず救援物資に変えてしまう
キャンディの包み紙のように
世界中の衣服を集めて燃やし
クローゼットを宙に浮かせる
シンジケートが必要だ”という声が
ふいに頭の中で響いた
痩せたポーキュパインが
道端の草むしりをやめ
ゆっくりと振り向き
切手を額に貼り付けて
念入りに右手の薬指を舐めたから
君はここにいる




自由詩 バス通り Copyright в+в 2007-03-28 23:37:48
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