ああ天よ
ぽえむ君

ある年老いた男が
山の中を一人で歩いていた
わずかばかりの荷物を
小さなリュックに入れてはいたが
引き返す気持ちは持っていなかった
男は朽ち果てた倒れた木を見つけ
そこに座った
辺りは暗くなり始めていた
男は空を見上げてつぶやいた

 ああ天よ
 なぜ私をこの世に生を授けたのか
 苦しみの後には幸福がくると
 そう信じていたが自分にはなかった
 ずっと苦労ばかりだけだった
 心に苦痛と傷ばかりの人生だった
 その度に生きるとは何なのか
 いつも考えさせられた
 それももう疲れた

 ああ天よ
 私はこの世界に生きて正しかったのだろうか
 誰かを幸福にしてあげることはできなかった
 自分すらも満足させることもできなかった
 その度に幸福とは何なのか
 ずっと考えさせられてきた
 それももう枯れてしまった

天は無言以外は何も答えなかった
山の中も静寂と闇が広がってゆく

 ああ天よ
 これが私に対する答えなのか
 自分の人生の中で
 誕生と死だけが平等だというのか
 私は自由と公平とは何なのか
 ずっと考えてきたというのに
 それももう死んでしまった

男はもう何も思うことも
考えることもしなくなった
仰向けに寝そべり天を眺めるだけにした
しかしそれも疲労と悲しみで
続くことはなかった

天に陽が昇り
山に暖かさと新たな時と生が誕生した
それは天からのメッセージなのかもしれない
この光景に男はどう思うのだろう
しかし男の体は
すでに冷たくなっていた


自由詩 ああ天よ Copyright ぽえむ君 2007-03-28 23:35:22
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