予感
緋月 衣瑠香
ずっとずっと遠くで波の音が聞こえたような気がしました
それが耳鳴りのように鳴り止まないのです
あれはいつのことだったのでしょうか
広い空の端っこに灼熱の太陽が半分だけ沈んでいます
そして海風が吹いたのです
それは神の吐息のようで私は胸がつまるような思いでした
頭の中の思い出のアルバムが音を立てて捲れ上がりました
透明なアルバムは何かを感じ取ったかのようにぴたりとあるページで止まりました
さて、いつの写真でしょうか
黒く焼けた素肌に白いワンピースで微笑みかける私
後ろには息を呑むほどの、青い海
押し寄せる潮騒
潮の匂いが鼻をくすぐっていました
私の胸を不安と期待とで躍らせるのです
音
これは私の音でしょうか
それとも海の音でしょうか
今、共にリズムを刻んでいます