朝闇の川
結城 森士
水が流れ、小さな波形を象りながら、水が流れ、流動し、常に変化し、透明は透明を反射し、波は闇の中に動き廻り
川は流れ、光を包み込みながら川は流れ、あるべき方向へと流れ、何も変わることはなく、静かに流れ
私は風に吹かれ、常に流動し、何も変わることはなく変わり続け、此処に流れ、片時も此処にいなかったことはなかった
(左腕に纏わる透明な幼子)
雲は形を変えながら流れていく
(首筋をなぞる呼吸と擦れ声)
見えることのない流動の中で感じていた
無意識を 無意識に
*
夜空に流れる星、朝の月
朝闇に吸い込まれる星、昇る太陽
ある日の日没に、星は鳥になり
ある日の有刺鉄線に、翼を傷つける
ある日の水の底で、くたばった残骸は
ある日の朝闇に、星になる
ある日、ある星が流れ
ある日、吸い込まれて消えた
暗い今朝は夜
暗い明日は朝
*
暗い朝は暗い夜であり
その刻々と変わっていく様相は
何一つ変わっていないことを示すのみであり
対岸で動かなくなったあの鳥は、かつて水であった
そして今、永遠に動くことのない景色を眺めている