三つの次元
はじめ

 無数の雪片の一つが僕の熱を帯びた唇に溶けていく
 綿雪が降りしきる夜 綿雪が降るさんさんさん…という音だけ聞こえる 暗黒の幽冥
 外灯が一本向こうに立っているだけだ
 ここがどこだか分からない
 外灯の下に立って一寸先も見えない暗闇に手を伸ばす
 このまま雪に埋もれて凍えて死んでしまうのだろうか?
 僕はこの空間の先へ歩いていった
 そこは僕の頭の外の世界だった
 僕は白紙の上でキーボードを打っている
 窓の外には春が満ち 桜が舞って君が踊っている
 僕も外へ飛び出して 君と一緒に踊る
 全てがスローモーションに映り こんな世界は現実には無いと感じる
 春の花々が咲き乱れ 春の妖精達が僕らの周りで群舞する
 突き抜けるような白い天にクリーム色の卵黄のような太陽
 僕達は空の塔の中にいるような感じがする
 僕は踊り疲れて芝生に倒れた
 君は桜の木の下で眠っていた
 僕は安心して家へ入り キーボードを打つ
 僕は僕の脳の中に戻って歩き続ける
 綿雪が膝関節辺りまで積もっていて外灯の元へと着くまで果てしない時間がかかった
 夜が明ければこの暗暗黒たる暗闇は眩い光に飲み込まれ消滅するだろう
 しかしいつになったら夜明けが来るのか分からない
 『朝』という概念が僕の脳にはないのかもしれない
 でも外灯が灯るということは何処かに人がいるということだ
 積雪を掘り返してみると地面は土だった
 外灯の下を掘り続けて根元の部分にコードが延びていた
 僕はコードの行き先に行く為 さらに土を掘っていった
 キーボードを打つのを止めて 僕は大きな欠伸をした


自由詩 三つの次元 Copyright はじめ 2007-03-27 05:49:49
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