灰
海月
記憶の奥底、光が届く事なき場所
誰の手も触れられなく汚れる事なき思い出
耳を澄ませば、僕の名を呼ぶ声が
微かに日付が変わった日に雨に混ざり
聴こえてくる
忘れかけの言葉と記憶と云う名の筆と絵の具
白と黒の風景に色が付く
風の音、陽射しの温もり
君の声、木陰に隠す気持ち
季節外れの白い肌が夏の印象を忘れさせる
細い身体の線が崩れ落ちる音が聴こえそうで
僕は耳を両手で力強く塞いだ
君の言葉は何も聴こえない
未来の僕らに向けた手紙を書いた
三日も過ぎれば自然と忘れる筈
恥ずかしい事や素直な事は何故か忘れられず
忘れたいと願い思えば想う程に強く心に張り付く
久しぶりに光を浴びた写真
退化して色褪せていた
だけど、その中に僕と君がいた
確実に僕らがいた
嬉し楽しき日々は形を成さなければ
平凡の日々と同化してしまう
そして、風景を剥ぎ取られて
その日に何も無かった様に
長い雨は降り続き
水溜りは揺れている
天気予報だと
朝方にでも止む
今日の夕暮れ時には
水溜りは枯れている
そして、僕の記憶は全てなくなる
水溜りの様に
色の付き始めた風景
隅の方から燃え始めた絵
全ては灰と化す