少年の笑み
黒子 恭

少し、自分を誤魔化した帰りに、暮れる一日に目を背けるような影の中。
で、立ちつくしている
少年は、笑わない。
 
少し、丸くなりかけている背中の、その脊椎の奥の奥の、奥。
で、未だ垂直を保ちたい
少年は、笑わない。
 
ネオンが、やけに殺傷能力を持つ色街の、その隅にぽつりと座る、色白のか弱そうな女。
の、瞳の中に意味を見つけたかった
少年は、笑わない。
 
2DKの借家が、やけに広く感じたのは、私が独りだからだ。
と、言いながら布団を被るその枕元で
少年は、笑わない。
 
せんちめんたるだか、せんちめーとるだかしらんが、とにかくつかれた。
そうだ。しのう。
そう言って睡眠薬を手にとって、どのくらい飲めばいいのか考えて考えて考えて考えて考えた末に、やっぱり今日はよそう。
と、そそくさと朝飯の支度をし始める三月の月と太陽の交差の最中で
少年は、笑わない。
 
少年は、笑わない。
笑ってなど、くれない。


自由詩 少年の笑み Copyright 黒子 恭 2007-03-26 23:17:08
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