海を見る。
新谷みふゆ

小鳥はもう飛ばないんだ もう死んでしまったんだ
生き返らせてときみが泣くから
小鳥の背をナイフでなぞった
流れる赤い血を見てふたりはせつなくなれたから
青空の下 海へ向かってる

肺が放出するのは 黒く染まった吐息
赤い液体をきみは燃やし
きみの起伏を滑らかに変える
満ち潮と引き潮がならしていった砂の上
どんな文字を書いてみよう

警告が鳴り 降りた遮断機
電車が過ぎるまでに 途切れたものを繋ぎ合わせよう

空に眼をやれば 波と同じ数だけ鳥の羽根
そこかしこに命の呼吸
全てを包み込むかのように きみは大きく息をした



子供が海へ返す愛は 花びらや小石や・・・
新しくできた足跡を辿り
背中の風に遠い目をして
淋しさは夜光虫 夜のあちこちを細い爪で
引っ掻いては消えていくだけさ

きみの描いていた夢は何処で終わってしまったの
人は何処で終わりになるの
ひからびた情熱が笑う
小鳥の体はまだ温かなぬくもりを宿し
夕暮れの空が赤く輝く

目隠しされて口を閉じた街
星が流れるまでに 途切れたものを繋ぎ合わせよう

感じるのは苦しくなるような気持ち
胸を突かれて初めて解った
なくしたものを抱くように きみは深く息をした


自由詩 海を見る。 Copyright 新谷みふゆ 2007-03-26 11:00:01
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