心から命へ
渡辺亘
世の中はいろんな難しいことがあるけれど
心を変えるのが
一番難しい
心は 目に見えない
心は さわれない
しかし 耳を澄ませば
きこえてこないか
命の鼓動が
冷えきった宇宙に 今
命が脈打っている
心は奇跡
心は時間に似ている
心ははかれない
時も同じように
一瞬に永遠を宿す
心は鍛えることができる
心は自由にもなれる
だけど心は
いつも何かに縛られているようでもある
命は宇宙に遍満しているが
心はそこからわきあがってくる何かだ
心はいつもきいている
命の鼓動を
心はいつも命の井戸から
清らかな水を汲み上げる
それを濁らせるのも心
それを素直に飲めるのも心
不思議な
不思議な
心の世界
心は物質に
物質は心に
互いに影響しあいながら
時という巨大な流れの中で
花を咲かす
その秘密を知れば
生きて、今、自分に
心が宿っていること自体が
奇跡だと知る
私の運命は
私のものだから
誰にもゆずれない
必ず使命を果たして
私は生き抜いてみせる
冬の時代
私の心は荒れて
冷たい地面にはいつくばり
吐く息さえ凍った
しかし最後の一線で
私は心を失わなかった
それは
生きのびてみせるという
意思だった 凶暴ともいえる
人のために生きたいという
意思だった 凶暴ともいえる
それだけだ
私を支えたのは
そのために私は
パンをかじった
肉も喰った
私は自身の命をながらえるために
他の命さえうばうことをしたのだ
これは生きるということの
宿命なんだ
だから
心を
大切に
しないと
生きていけないのだ
今日星をみて心うごかされるのも
他の命をもらえたから
明日朝日が見られるのも
他の命をもらえたから
その事実に目を背けて
なにが感動か
豚肉を食べるとき
狭い家畜小屋で
悲鳴を上げている
豚の気持ちになったことはあるか
私は感謝して
この命を全うする
生きて生きて生き抜く
一瞬ともいえる人生を
大切にする
だから
生命が他の生命のために
奉仕することがなんと尊いか
漆黒の暗闇に
太陽が昇ったようではないか
命は関連しあい
時の流れに逆らうことなく
さまざまな華を咲かせ
永遠の旋律とともに
果てしなく広がっていく