歓楽街
からふ

頭に小さな針で穴をあけると
容易くゼリー状の意識が入りこむ
意味を下さいって
当たり前の様に垂れ流される
ネオンサインの空



夜をごまかすのは
眠りたくないからじゃなく
オルゴールじゃ踊れないのよって
笑いながらそう言うのは
最後の初恋を買いに
ポニーテールを剥ぐ少女



おまじないが効かない
手のひらに書いた「人」は
コーヒー豆みたいに小さいのに
苦すぎて飲み込めないから
噛み砕かれた「人」は
舌の上でいつまでも眠れない



終電はからっぽのまま
朝の方へと向かっていった
地味な色のアイシャドウでゴミ箱はいっぱいで
なにも捨てられない
なにも捨てられないから
なにも捨てないで
アイシャドウを拾ってポケットに入れる



手のひらの「人」みたいに
この街に飲み込まれて
ネオンサインの空で泳ぐ
雲にはなれなくて
僕はずっとわたあめだった


自由詩 歓楽街 Copyright からふ 2004-04-24 23:51:34
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