汚れた石鹸
ぽえむ君

石鹸は邪悪な念を持ち始めた
毎日のように汚いものに接しているうちに
その心が侵されてしまったのだ
穢れがなければ自分の存在はない
穢れとともに生きてゆくことに
生きがいをもつようになった
汚れを落とすたびに
汚れた心が付着してゆく
今まで汚いと思っていたものが
美しいものと思えるようになっていった
穢れはもう穢れではなかった
石鹸は自分自身の存在に
疑問をもつようにまでなった
果たして自分は綺麗なものなのだろうか
そう思ったときには
石鹸は薄っぺらい塊と果てていた
小さくなった石鹸は
幼い女の子の手によって
お湯で溶かされて
大きなシャボン玉となって
空へと飛んでいった


自由詩 汚れた石鹸 Copyright ぽえむ君 2007-03-25 12:41:34
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