ツー・スリー…
はじめ
二番目の故郷の街を君の死で飛び出して 神父か詩人になるかで悩みながら 各地を放浪し この街に流れ着き 答えが出ないまま この街の神学校に通い 僕はミスター・ドーナツで働きながら詩を書いている
詩を見せる相手はこの街の外れにある セペラメスクルンドル教会のドジャック神父さん 教会で働くシスターさん達 それと毎日必ず朝七時に礼拝しに来るキリガー老夫妻さん達だ
僕は神学校の授業が終わると夜遅くまでアルバイトをする その後 家に帰って夜明け前まで詩作に励む 一日十編書くこともある 子供にも分かるように平仮名で書いた詩もある それをキリガー老夫妻が来る前に教会まで持ってきて掃除中のシスターや神父さんに見せて講評をもらう 大抵は褒めて貰う しかしキリガーさんの奥さんは厳しく 「こんなのは詩って言わないよ」と詰られ せっかく書いた詩の紙を後ろへポーン と投げられる
僕は人生の選択肢を迷っているけど 心の奥では 早く神学校を卒業して ドジャック神父さんから叙階の秘蹟を授かって神父になりたいと思っている しかし詩人になることも諦められない こんな素敵な毎日が永遠に続けばいいなぁと思っている だが時間はそんな僕を待ってはくれない
神学校の卒業式が終わった後 僕はドジャック神父さんの所へ行き 懺悔聴聞してもらい 今後の進路について相談してみた
牧師さんは「自分の本当にやりたいものが見つからないんだったらそれまで両方選びなさい」と仰ってくれた
僕はその言葉で元気が出て 神父になって詩人になることにした
それから十数年後 僕はイエズス会に入ってこの生涯を司牧に捧げ 神父になった
三番目の故郷に当たる何もなかったこの街で教会を開き 告解の秘蹟で信徒の罪を許している
今年の春の君の命日に初めての詩集を出す予定だ