雨だれシンコペーション
渡 ひろこ
どんよりとした午後
気だるくジャズを聴きながら
ふと コーヒー・ミル引く手を休めると
ポツポツと出窓を鳴らして合図する
気まぐれな訪問者がやってくる
いつのまにか
部屋にながれるジャム・セッション
ワン・テンポ遅れのリズムをきざむ
降りつづくティアドロップのパーカッション
メロディにうまく溶けようと
ミルク・クラウン描いて踊る
グレーの空
しぶきをあげて走る車
雫をまとった街路樹
窓にうつる景色は
思うままに染めようとも
軽快なリズムに馴染んでゆけない
雨だれシンコぺーション
今日もまた
ポツポツと舞い降りる
悪戯な訪問者
出会うものはすべて打楽器
古びたトタン屋根
くるくる回る赤い傘
ひび割れたアスファルト
そして
ワタシの乾いた心に打ち響く